太陽の国が育んだスペインワインの情熱的な味と香り
■スペインワインの誕生
古くは、紀元前1100年ごろ、スペインは古代ギリシャ人やフェニキア人が支配しており、彼らの祖国から持ち込まれたぶどうの樹と醸造技術がスペインワインの始まりです。
711年のイスラム教徒によるイベリア半島侵略により、飲酒を禁じる戒律をもつ彼らによって多くのぶどう園は破壊されました。その後のキリスト教徒によるレコンキスタ(国土回復運動)が始まり、キリスト教徒の再殖民が行われ、ぶどう畑も再興されていきました。そして15世紀末、レコンキスタ終了と同時に大航海時代が幕開けとなり、スペインはいち早く大海に乗り出し、広大な国土を誇る大国になりました。この地理上の発見は、スペインワインに広大な市場を開き、南東部の沿岸都市はワイン貿易で繁栄しました。
1970年代に入り、スペインがそれまでの半鎖国状態から抜け出したことによって、ワイン産業は量から質を重視する方向に大きく転換することになりました。1980年代、1990年代に入るとそれまで無名だったプリオラートやリアス・バイシャス、日常ワイン生産地のラ・マンチャなど各地のワイン産地に素晴らしいワインが生まれるようになり、一躍世界の注目を集めるようになったのです。21世紀に入った現在、世界を旅して醸造学を学んだ新しい世代による新しいスペインワインが、次々と誕生しています。スーパースパニッシュと呼ばれるワインが次々と誕生し、世界のワイン業界が熱い視線を送っている国がスペインです。
■世界ナンバーワンの栽培面積
「情熱の国」という形容詞がぴったりのスペイン。フラメンコ、闘牛、輝く太陽とヒマワリ、そしてワインで知られています。
ヨーロッパ大陸の南の端にあり、北側をフランスとイタリアに接し、南はジブラルタル海峡を挟んで、アフリカ大陸を望む広大な国です。ピレネー、カンタブリア、システマ・セントラ、シエラ・モレナ、シエラ・ネバダなど多くの山脈が走り、その間に平原が広がり、大河が流れています。そんな広大な国土のほぼ全土でぶどう栽培が行われており、栽培面積は約111万haと、世界ナンバーワンを誇っています。
北部は比較的降水量が多く温暖な海洋性気候、東部は乾燥した地中海性気候、南部は降水量が少ない大陸性気候と、全体的に温暖な気候に恵まれています。土壌もぶどう栽培に適した石灰石や粘土質が多く、このような多様で理想的な気候風土のもと、スペインでは約146品種にも及ぶぶどうが栽培されています。スペイン原産による品種も多く、約40種ほどは地方によって呼称が変わるものです。これらのぶどうを原料にして生産されるワインは年間約34,755,000hlで世界第3位。スペインは世界でも評価の高いワインの宝庫となっています。
主なワイン生産地は、エブロ川流域、カタルーニャ地方、アンダルシア地方、スペイン中央部、カスティーリャ・レオン地方、ガリシア地方、レバンテ地方、バリアレス地方、カナリア諸島の大きく9つに分けられます。なかでも、エブロ川流域・リオハの赤ワインと、カタルーニャ地方・ペネデスのカヴァ(発泡性ワイン)、アンダルシア地方のシェリー(酒精強化ワイン)は有名です。
発砲ワイン「CAVA」カヴァ
年末年始のお祝いをはじめ、結婚式や誕生日などおめでたい席に欠かせないのが発泡ワイン「カヴァ」です。シャンパンとは混同されがちですが。少し違います。カタルーニャのワイン醸造所研究家、マヌエル・ドゥラン氏によると、今日「カヴァ」と呼ばれているワインはまずシャンパンの「類似品」としてフランス産のブドウを原料に作りはじめられたもので、のちにカタルーニャ原産のぶどう3種(チャレロ、マカベオ、パレジャーダ)を使って醸造されるようになり、スペイン独特の個性を持つ発泡ワインとして発展してきたものです。 シャンパンの特徴である際立った酸味を、カヴァは持ちません。これは両者のぶどう栽培地の気候の違いからくるものです。シャンパンのブドウ栽培地はパリ近くの寒く雨の多い地域で、ぶどうの含有糖分が上がらず、酸味が強いのに対し、カタルーニャは雨が少なく比較的温暖です。 酸味をやわらげるためと瓶内二次発酵の際に必要な糖分(糖分がアルコールに分解される際に泡ができる)を補うため、シャンパンには瓶詰めの際と、コルクで栓をする前との2回に糖分の添加が行われますが、カヴァの場合、発酵のための糖分添加の必要はありません。一度味の違いをお試しされてはいかがでしょうか。